画像処理

意外と使える!天体写真の位置ずらしワンショットフラット補正

星雲のない空間(エリア)を1枚撮るだけの位置ずらしワンショットフラット補正

位置ずらしワンショットフラット補正は目的の天体からすぐ近くのほとんど星雲のないエリア(恒星しかないエリア)をワンショット(1枚)だけ撮影し、これを画像処理でフラットフレームを作って明るさ調整で周辺減光を補正をする簡易フラットです。

ソフトビニングフラット補正セルフグラデーションマスクフラット補正は星雲を消す画像処理が面倒。

ワンショットフラット補正は星雲などがないので楽で良いけど半透明のPPシートなどで撮影する必要があるし、光害カブリがあるのでちょっと処理が難しい。

って事でワンショットで尚且つ星雲を消す必要もなく光害カブリ処理が少し楽な簡易フラットです。

位置ずらしワンショットフラット補正のやり方

位置ずらしワンショットフラット補正のフラットフレームの撮影方法と画像処理のやり方を記載していきますが、その前にビフォーアフターから。

左が位置ずらしフラット補正前で右がフラット補正後です。周辺減光が緩和されました。

【左】位置ずらしフラット補正前【右】位置ずらしフラット補正後

意外と普通にフラット補正できる感じです。

位置ずらしワンショットフレームの撮影方法

位置ずらしワンショットフレームの撮影の手順としては

  • 目的の天体を視野に入れて撮影設定を決める(焦点距離/ISO感度/F値/露光時間/ホワイトバランスなど)
  • 東西や南北に位置をずらして目的の天体からなるべく近いほとんど星雲の無いエリア(恒星のみのエリア)を視野に入れる
  • 目的の天体を撮影する場合と同じカメラの設定で位置ずらしエリアをワンショットだけ撮影
  • 目的の天体に位置を戻して撮影を開始する

撮影のやり方はこんな感じです。

基本的に空が曇ってしまったら位置ずらしワンショットフラットフラームは撮れませんので目的の天体を撮影する前に必ずワンショット撮る方が良いと思います。

では今回はいて座M8(干潟星雲)を1200㎜位で位置ずらしワンショットフラット撮影をしたいと思います。

一眼レフとカメラレンズで撮影したM8(干潟星雲)の位置と射手座(いて座)周辺の天体がわかる写真星図を撮りました。

M8(干潟星雲)の位置と射手座(いて座)周辺の天体がわかる写真星図|リコーPENTAX KP+TAMRON ズームレンズ AF18-200mm F3.5-6.3 XR DiII

まずは干潟星雲を視野に入れました。

カメラのディスプレイに焦点距離約1200mmのM8(干潟星雲)が視野に入っています。

M8(干潟星雲)を約1200mmでカメラの視野に入れました

今回は1枚辺りISO25600/F5/45秒でホワイトバランスはマニュアル設定で撮影する事に決めました。

試し撮りの写真はこんな感じです。

カメラのディスプレイに映っている試し撮りをした焦点距離約1200mmのM8(干潟星雲)です。

試し撮りをした焦点距離約1200mmのM8(干潟星雲)

試し撮りで設定が決まったら位置をずらします。

干潟星雲の場合は東側が天の川なので、西側の星雲が少ないエリアに1画角分だけ赤道儀のコントローラーを使って移動させました。

PENTAX-KPのディスプレイに映った干潟星雲から西へ1画角分だけ位置を西へずらしたエリアです。

干潟星雲から西へ1画角分だけ位置を西へずらしたエリア

この辺りです。

左の黄色い枠の中が今回撮影する目的の天体であるM8(干潟星雲)で右の赤枠が位置ずらしエリアです。

M8(干潟星雲)と位置ずらしエリア

この位置ずらしエリアを同じ設定で1枚だけ撮影しました。

ディスプレイに位置ずらしエリアを撮影した写真が映し出されています。

これから撮影する天体と同じ設定で位置ずらしエリアを1枚撮影

位置ずらしエリアをワンショットだけ撮影したら目的の天体に位置を戻していつも通り撮影していくだけです。

位置ずらしワンショットフラット補正の画像処理

画像処理は星雲を消す必要がないので凄く簡単です。

ISO25600/F5/45秒/47枚コンポジットしたM8(干潟星雲)と同じ設定で撮影した位置ずらしワンショットフラット画像(1枚)でRGB分解明るさ調整マスクでフラット補正をやってみます。。

今回使用する画像処理ソフトはステライメージ9Corel PaintShopでやってみます。

Adobe PhotoShopやその他フリーの画像処理ソフトでも何でも構いません。

左が47枚コンポジットしたM8(干潟星雲)で右が位置ずらしフラット画像1枚です。

【左】47枚コンポジットしたM8(干潟星雲)【右】位置ずらしワンショットフラット画像(1枚)

まずは位置ずらしワンショット画像をRAWで開いてホットピクセルとクールピクセルを除去しておこうと思います。

「フィルター」→「ホット/クールピクセル除去」で今回は閾値(しきいち)10%で処理しておきました。

※私はダーク減算をしていないのでこの作業をしています。元画像をダーク減算している方はこの位置ずらしワンショットフレームもダーク減算しておいて下さい。

ステライメージ9で位置ずらしワンショット画像のホットピクセルとクールピクセルを除去します。

ホットピクセルとクールピクセルを除去

「画像」→「ベイヤー/RGB変換」でカラー化します。

RAWファイルの位置ずらしワンショット画像をカラー化しました。

RAWファイルをカラー化

「画像」→「ソフトビニング」でX=10、Y=10として画像サイズを1/10にします。

ソフトビニングで画像サイズをX:10、Y:10とします。

画像サイズを1/10にする

「フィルター」→「ミニマムフィルター」で微恒星を消します

今回は「半径=1.5」としました。

ミニマムフィルターで微恒星が消えました。

ミニマムフィルターで微恒星を消す

半径を大きくすると多くの恒星が消えますが、フラットの形も変わってしまうのでなるべく小さい数字にしながらもある程度微恒星が消えるようにします。

残った大きな恒星はこれから消していきます。

この状態の位置ずらしフラット画像をTiffで保存してレタッチソフトで開きます。

今回はCorel PaintShopで開きます。

レタッチソフトCorel PaintShipで位置ずらしフラット画像のtiffを開きました。

Corel PaintShipで位置ずらしフラット画像のTiffを開いた

クローンブラシを使って残った大きな恒星やセンサーゴミの痕を消してナチュラルにします。

位置ずらしフラット画像に残った大きな恒星やセンサーゴミの痕です。

大きな恒星の痕やセンサーゴミの痕

クローンブラシを使って位置ずらしフラット画像に残っていた大きい恒星やセンサーゴミの痕を消しました。

クローンブラシで大きい恒星やセンサーゴミの痕を消した

次にガウスぼかしを掛けるのですが、これからまたステライメージを使っていくのでこの段階でTiffで保存してステライメージで開こうと思います。

ガウスぼかしを軽く掛けていきますが、やり過ぎるとフラットの形が変わっちゃいますのでやり過ぎない方が良いです。

現在1/10の画像サイズですが、この状態で「半径=15」位ぼかしてみようと思います。

位置ずらしフラット画像を1/10サイズの状態でガウスぼかしを掛けるとナチュラルになりました。

フラットの形が変わらない程度にガウスぼかし

では現在位置ずらしフラット画像は1/10の画像サイズになっていますので撮影した天体写真と合わせます。

「画像」→「画像解像度」で元画像のサイズを確認してフラット画像に入力します。

位置ずらしフラット画像を天体写真と同じサイズにしました。

位置ずらしフラット画像を天体写真と同じサイズにする

「諧調」→「反転」で位置ずらしフラット画像の諧調を反転させます。

位置ずらしフラット画像の諧調を反転させると中央付近が黒く周辺が白くなりました。

位置ずらしフラット画像の諧調を反転させる

「合成」→「RGB3色分解」でRGBの3色に分解します。

位置ずらしフラット画像をRGBの3色に分解しました。

位置ずらしフラット画像をRGB3色分解

位置ずらしワンショット画像R・G・Bをそれぞれレベル調整でデータのある手前まで切り詰めます。

「諧調」→「レベル調整」で「対数スケール」と「ピークを表示」に☑を入れてデータを削らない程度に切り詰めます。

※「対数スケール」や「ピークを表示」などの機能がないソフトの場合はデータを削らないように少し広めに取っておくと良いと思います。

位置ずらしフラット画像Rチャンネルをレベル調整でデータがある手前まで切り詰めると中央が黒く周辺が淡いグラデーション画像ができました。

位置ずらしフラット画像をレベル調整でデータがある手前まで切り詰める

位置ずらしフラット画像R・G・Bをそれぞれデータのある付近まで切り詰めました。

RGBそれぞれのチャンネルをデータがある手前まで切り詰めた後の位置ずらしフラット画像を並べてみました。

データのある手前まで切り詰めた後の位置ずらしフラット画像RGBチャンネル

次はM8(干潟星雲)の天体写真も同様に処理していきます。

同じくRGB3色分解をしてデータのある付近までレベル調整でそれぞれ切り詰めます。

上がM8(干潟星雲)の天体写真のRGBチャンネルで下が位置ずらしフラット画像のRGBチェンネルです。それぞれレベル調整でデータがある付近まで切り詰めてあります。

レベル調整でデータがある手前まで切り詰めた【上】M8(干潟星雲)のRGBチャンネル【下】位置ずらしフラット画像のRGBチャンネル

もし、天体写真をデータがある付近まで切り詰めても星雲が見にくかったり眠い画像になってやりにくい場合はデジタル現像などでハイトーン側を圧縮してから処理を開始するとやり易いです。

この状態ができたらこれからRGB分解明るさ調整マスクフラット補正をしていきます。

RGBのどれからでも良いですが、まずはRチャンネルからやっていこうと思います。

天体写真のRチャンネルを前に出して、「選択範囲」→「選択マスク指定」若しくはチャンネルパレットの「選択マスク設定」から位置ずらしフラット画像のRを選択マスクとして指定します。

M8(干潟星雲)の天体写真Rチャンネルに位置ずらしフラット画像のRチャンネルを選択マスクとして指定しました。

天体写真Rに位置ずらしフラット画像Rを選択マスク指定

「諧調」→「明るさ/コントラスト」で明るさだけを上げていきます。

Rチェンネルは明るさを「60」上げてみました。

選択マスクをした状態で明るさを60上げてみると天体写真Rチャンネルがフラットになりました。

フラットになる位置まで明るさを上げる

これと同じ処理をGチャンネル、Bチャンネルに対しても行います。

  • 天体写真Gチャンネルに位置ずらしフラット画像Gチャンネルを選択マスクとして指定してフラットになるまで明るさを上げる
  • 天体写真Bチャンネルに位置ずらしフラット画像Bチャンネルを選択マスクとして指定してフラットになるまで明るさを上げる

今回は「R=+55」「G=7+0」「B=+65」としてある程度フラットにしてみました。

左のRチャンネルは+55、真ん中のGチャンネルは+70、右のBチャンネルは+65それぞれ選択マスクを付けて明るさを上げてフラットにしたM8(干潟星雲)の天体写真です。

RGBそれぞれ選択マスクを付けて明るさを上げてフラットした

「合成」→「RGB合成」します。

「赤=Rチャンネル」「緑=Gチャンネル」「青=Bチャンネル」を設定して合成。

明るさ調整マスクフラット後にRGB合成されたM8(干潟星雲)の天体写真です。

明るさ調整後に各チャンネルをRGB合成

位置ずらしフラットフレームは光害カブリも含んだ画像ですが、若干カブっている可能性もあるので確認します。

「ツール」→「周辺減光/カブリ補正」を開いて「周辺減光」から「カブリ」に変更して光害カブリの具合を確認します。

ステライメージのカブリ補正機能で光害カブリの具合を確認。

カブリ補正機能で光害カブリを確認

多少光害カブリしているのでまずはRGBチャンネルまとめて横方向を調整してみます。

天体写真の横方向の光害カブリをRGBまとめて補正しています。

横方向の光害カブリをRGBまとめて補正

RGBまとめてみると横方向の光害カブリが補正されました。

RGBまとめてみると横方向の光害カブリが取れました。

RGBまとめて見ると横方向の光害カブリが取れた

念の為、「Rチャンネル」「Gチャンネル」「Bチャンネル」とそれぞれ選択してカブリ具合を確認しておきましたが、特に特定のチャンネルだけかぶっている事は無かったので横方向はOKとしておきます。

次に縦方向に切り替えてRGBまとめて光害カブリを補正しておきます。

縦方向の光害カブリを確認します。

縦方向の光害カブリを確認

殆どカブっていませんでしたが、ほんの少しだけ調整しました。

縦方向をRGBチャンネルそれぞれを確認しましたが問題なかったのでカブリ補正はこれでOKとします。

明るさ調整とカブリ補正までができたM8(干潟星雲)の天体写真の状態はまあまあいい感じです。

明るさ調整とカブリ補正までできた状態

かぶり方は天体写真によって違うので別に縦横で補正しても良いですし、斜めでも何でも良いところを探してもらえれば良いです。

「ポイント指定」に☑を入れて補正しても良いです。

ステライメージ9のポイント指定のカブリ補正で光害カブリを取っても良いです。

ステライメージ9のポイント指定カブリ補正

レベル調整若しくは背景の星雲などがない付近でオートストレッチを使ってホワイトバランスを合わせておきます。

オートストレッチ機能でホワイトバランスを合わせたM8(干潟星雲)です。

ホワイトバランスを合わせる

強調して確認しておきます。

位置ずらしフラット補正が終わってM8(干潟星雲)の天体写真を確認するとフラットになっていました。

強調してフラット具合を確認

左斜め下側にセンサーゴミの痕があるのでセンサーゴミの黒い斑点のような汚れを画像処理で修復しておきました。

位置ずらしフラット補正のビフォーアフターです。

左が位置ずらしフラット補正前で右がフラット補正後です。周辺減光が緩和されました。

【左】位置ずらしフラット補正前【右】位置ずらしフラット補正後

左が位置ずらしフラット補正前で右が補正後の強調したM8(干潟銀河)の天体写真の比較です。

強調比較【左】位置ずらしフラット補正前【右】位置ずらしフラット補正後

後はここから画像処理をスタートしていく感じですが、強調していくと微妙にフラットが合っていないなどが出てくると思います。

例えば周辺が赤いと思えば、カラーの天体写真に位置ずらしフラット画像Rチャンネルを選択マスクで指定して、明るさ調整でRチャンネルを指定して周辺減光をいつでも調整できます。

選択マスクと明るさ調整で画像処理中にいつでも天体写真の周辺減光を微調整できます。

選択マスクと明るさ調整でRGB別にいつでも周辺減光を微調整可能

動画はこちらから

位置ずらしワンショットフラット補正の動画も作成しておきました。

【動画】意外と使える!天体写真の位置ずらしワンショットフラット補正

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