画像処理

天体写真の青ハロを自然に除去する画像処理方法(減算マスク編)

盛大に青ハロがある天体写真です

天体写真の恒星の周りに頻繁にできる青ハロ赤ハロパープルフリンジ緑色の恒星

これを減算マスクを使って自然に画像処理で除去する方法です。

今回はズームレンズで撮影した盛大に青ハロが発生しているM8(干潟星雲)M20(三裂星雲)M21付近の天体写真を例に画像処理してみます。

もう青ハロなんて気にせず撮影できますよ!

青ハロ除去方法

今回の青ハロ除去はステライメージ9を使用しますが、減算処理ができる画像処理ソフトなら何でもできると思います。

また、これから青ハロ除去する天体写真はフラット補正のみ行っています。

今回は強調処理とかアレコレする前に青ハロ除去を除去してみましたが、状況によっては最後の方で処理するしても良いかもしれません。

とにかく除去できるとわかれば画像処理がやり易くなりますよ。

最も明るい星を選んでRGBの明るさを255弱に揃える

この天体写真の中で最も明るい星は火星です。

このM8(干潟星雲)+M20(三裂星雲)+M21+火星が写った天体写真の中で最も明るい星は火星です。

この中で最も明るい星は火星

この最も明るい星のRGBの明るさを確認してレベル調整で255以下に揃えます。

背景側は黒潰れしないように40~50位にでもしておいて下さい。

今回はRGB共に220に揃えました。

明るい星にマウスポインターを合わせて明るさを確認して、最も明るい星のRGB値を220に揃えました。

最も明るい星のRGB値を220に揃えた

これで下準備は完了です。

青ハロ減算マスクの作成

青ハロを除去する為の減算マスクを作成します。

先程明るさを揃えた写真をRGB分解します。

天体写真をRGB分解しました。

RGB分解

今回は青ハロの除去なのでBチャンネルを複製しておき、

  • BからRを減算
  • BからGを減算
BチャンネルからRチャンネル、BチャンネルからGチャンネルをそれぞれ減算します。

BからR、BからGをそれぞれ減算

「BからRを減算したマスク」と「BからGを減算したマスク」の2枚が出来上がります。

この2つのマスクを比較明合成します。

BチャンネルからRチャンネルを減算したマスクとBチャンネルからGチャンネルを減算したマスクを比較明合成します。

減算マスクを比較明合成する

すると1枚の青ハロ部分が良くわかる減算マスクが出来上がります。

でもこれで完成ではありません。

このマスクをレベル強調して確認すると、背景部分にM20(三裂星雲)の青い部分やその他の青が混ざった星雲も写っています。

この減算マスクには青い星雲と青ハロが写っています。

青い星雲と青ハロの減算マスク

この段階の減算マスクには星雲が残ってしまっています。

減算マスクに残っている星雲

ですので背景側の最小値レベルを上げて星雲を消して下さい。

その後、最小値側は星雲を消した状態のまま最大値レベルをデータがある付近以上まで上げて下さい。

これで青ハロ減算マスクの完成です。

レベル調整の最小値側を星雲が消えるまで上げ、尚且つ最大値側をデータがある付近までレベルを上げる事によって青ハロ減算マスクの完成です。

青ハロ減算マスク完成

カラーバランスで青ハロ除去

元画像に作成した青ハロ減算マスクをマスクとして適応させます。

青ハロが一番目立つ恒星を拡大しながらカラーバランスを開いて青色を下げていきます。

すると恒星が緑色になりました。

青色を下げたので次に強い緑色が見えてきた形です。

青ハロを除去すると恒星周りが緑色になりました。

青ハロを除去すると恒星が緑色になる

上の写真のGとBの明るさを見て下さい。

実際の画像処理ではやらないのですが、とりあえず最も青が強かった付近のBだけ輝度を下げてBとGの輝度を「83」に合わせてみました。

この状態で後はGチャンネルのマスクを作って輝度を下げれば良いと思うかもしれないのですが、僕はこの場合はBの輝度をもう少し上げて薄ら青色がわかる程度にします。

青ハロを完全に消さずに薄ら青色がわかる程度にしておく方が良い。

青色が少しわかる程度にしておく

青ハロ減算マスクを作っていますが、元々青かった恒星の輝度を下げていますのでマスクが適応していない外側もわずかに青いからです。

青色の輝度をもっと下げるとわかると思います。

極端に青色の輝度を下げて見ると減算マスクが掛かっていない外側も少しだけ青い事がわかる

減算マスクが掛かっていない外側は少しだけ青い

極端に青色を下げて見ると減算マスクが掛かっていない外側も少しだけ薄ら青い事がわかると思います。

星雲を消す為にレベル調整で最小値側を少し上げましたが、その影響もあって若干減算マスクが掛かっていないエリアができています。

だから若干青色がわかる程度にしておく事が重要だと思います。

こうしておかないと後々強調処理をした時に厄介になってしまいます。

だから若干青色がわかる程度にしておくと自然になります。

Gチャンネル減算マスクの作成

次に緑色の恒星のカラーバランスを行う為にGチャンネル減算マスクを作成します。

現状の写真の状態のまま、

  • RGB分解
  • Gチャンネル複製
  • GからRを減算
  • 複製GからBを減算
  • 減算した2つのマスクを比較明合成
  • 合成したマスクをレベル調整で最小値側はそのまま(状況により上げる)に最大値側をデータがある付近まで切り詰める

青ハロ減算マスクと違う点は最後の「合成したマスクをレベル調整で最小値側はそのまま(状況により上げる)に最大値側をデータがある付近まで切り詰める」と言う点です。

※僕はいつも緑色が強い事が多いので緑色の最小値はそのままにすることがあるのですが、できたGチャンネルマスクの状況により考えて見て下さい。

Gチャンネル減算マスクをレベル調整で最大値側だけデータのある部分まで切り詰めます。

Gチャンネル減算マスクをレベル調整で最大値側だけ切り詰める

これでGチャンネル減算マスクが完成です

Gチャンネル減算マスク

緑色の恒星のカラーバランス調整

Gチャンネル減算マスクを適応させて緑色になった恒星のカラーバランスを調整します。

緑色のカラーバランスを調整するにはいくつかやり方があります。

1.緑色の恒星の緑の輝度を下げる

緑色の輝度をどこまで下げるかですが、R(赤)と同じくらいの明るさに合わせる事で恒星が白くなって自然になると思います。

Gチャンネル減算マスクをした状態で赤と同じ明るさになるまで緑色の明るさを下げる。

赤色と同じ明るさになるように緑色の明るさを下げる

2.緑色の恒星に青の輝度をプラスする

天体写真で言う緑色は完全な緑色ではなくて黄緑色になっていると思います。

緑色は青色と黄色を混ぜる事でできますが、黄緑色は黄色成分が強くなっています。

ですから黄緑色の恒星に青色をプラスして輝度を上げる事で「弱い青」つまり水色になります。

黄緑色だった恒星に青色の輝度を上げると水色になります。

黄緑色に青の輝度を上げると水色になる。

恒星の外側が青で徐々に内側に入ると水色で中心部が白色。

これも自然な感じでいいかもしれません。

緑色の恒星に赤色と青色の輝度を上げる

色は3原色ですので赤と青と緑を均等に足すと白になります。

現在黄緑色ですから緑が強い。

ですから黄緑色の恒星に赤色と青色の輝度を足していくと白に近づきますので、色のバランスを見ながら調整します。

黄緑色の恒星に赤と青の輝度を足すと白になりました。

黄緑色の恒星に赤と青の輝度を足すと白になる

これも自然な感じでいいかもしれません。

ただ、輝度を上げましたので恒星が少し大きくなりますね。

皆さんのお好みで調整してみて下さい。

今回は緑色の輝度を下げて恒星を少し小さく見せて白にしてみました。

ビフォーアフター

青ハロ除去のビフォーアフターです。

恒星の大きさも小さくなり、自然な青色の恒星になっていると思います。

左が青ハロ除去前、右が青ハロ除去後の天体写真です。

青ハロ除去ビフォーアフター

左が青ハロ除去前、右が青ハロ除去後の天体写真です。恒星を拡大した部分です。

青ハロ除去ビフォーアフター(恒星拡大付近)

左が青ハロ除去前、右が青ハロ除去後のM20(三裂星雲)付近を拡大した天体写真です。

青ハロ除去ビフォーアフター(M20三裂星雲付近の拡大)

左が青ハロ除去前、右が青ハロ除去後のM8(干潟星雲)付近を拡大した天体写真です。

青ハロ除去ビフォーアフター(M8干潟星雲付近の拡大)

青ハロがある状態で強調処理をすると画像処理が非常に難しいです。

ですので青ハロを除去してから強調処理を行うと画像処理が非常に楽になると思います。

赤ハロとパープルフリンジの除去

赤ハロやパープルフリンジも同じ要領で減算マスクを作成すれば処理できます。

RGB3色分解して減算でマスクを作成しても良いですし、ステライメージにはCMY3色分解(シアン/マゼンダ/イエロー)できる機能もあります。

特に説明は不要かと思いますが、また気が向いたら記事を書こうかと思います。

安い望遠鏡やカメラレンズでも、もう青ハロ・赤ハロ・パープルフリンジ・緑の恒星なんて気にせず撮影しようぜ!

動画

動画も撮影しておきました。

細かい処理方法などは動画で確認して下さいね。

【動画】もう気にせず撮影!天体写真の青ハロを簡単に除去する減算マスクを使った画像処理

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