画像処理

白飛びした天体写真を画像処理で簡単に復元させるセルフHDR

セルフHDR

天体写真でHDR撮影をすると時間が掛かる・・・

そんな面倒臭がりなあなたにおススメな画像処理がこちら!

セルフHDR!!!

淡い星雲を出す為にガンガン露光して画像処理で白飛びした部分を簡単に復元させちゃいます。

  • 天体写真のHDR撮影は露光時間を変えて何種類も撮らなきゃいけないから面倒
  • HDRってイラストみたいな合成写真になっちゃって自然ならない
  • HDRってノイズ増えない?
  • 淡い星雲を出そうとすると星が白飛びしてしまう
  • 星マスクをしてガンガントーンカーブをすると星の境界線がおかしくなる
  • デジタル現像で白飛びを抑えようとすると色が出にくくなる気がする
  • 写真全体じゃなくて画像処理で白飛びしたところだけ局部的にHDR風にしたいだけなんだ

そんなあなたのお悩みをある程度解決する画像処理がセルフHDRです。

セルフHDRの効果

セルフHDRは画像処理で白飛びした部分を抑制・復元させる効果があります。

下記はM31(アンドロメダ銀河)M42(オリオン大星雲)天の川のセルフHDRの効果がわかるビフォーアフターです。

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありのM31(アンドロメダ銀河)のビフォーアフター比較画像です。銀河の中心部の白飛びが抑制されて細部や色が復元していますね。

M31(アンドロメダ銀河)のセルフHDR合成ビフォーアフター

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありのM42(オリオン大星雲)のビフォーアフター比較画像です。星雲の中心部の白飛びが抑制されて細部や色が復元し、尚且つトラペジウムまで鮮明にわかります。

M42(オリオン大星雲)のセルフHDR合成ビフォーアフター

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありの天の川のビフォーアフター比較画像です。天の川の一番明るい部分の白飛びが抑制されて細部や色が復元しています。

天の川の新星景写真のセルフHDR合成ビフォーアフター

結構使えるので最近いろんな天体写真に使うようになりました。

セルフHDRとは

セルフHDRは特殊は撮影方法は一切必要ありません。

いつものように淡い星雲を出そうとガンガン露光して同じISO感度と同じ露光時間で天体写真を撮るだけです。

なので画像処理で白飛びを抑制・復元させる方法です。

ただ限界はありますので、デジタル現像や星マスクなどと併用して使用すると効果的ですし、オリオン大星雲やアンドロメダ銀河などのあまりにも極端な濃淡がある天体の場合は、ノイズがあっても良いので露光時間かISO感度を変えた写真をもう1枚だけ(多い方が良いけどやり過ぎると普通のHDRだね)でも撮っておくと役に立ちます。

画像処理で白飛びした星雲や恒星をピンポイントで復元する方法

セルフHDRをやる上での考え方としては、

  • 星雲の白飛びを復元する
  • 恒星の白飛びを復元する

こういうピンポイントの部分の白飛びを抑制・復元する画像処理です。

星雲と恒星を別々に復元する事もできますし、同時に復元する事もできます。

また、特定の箇所だけ復元する事もできます。

ですので背景には影響を及ぼさない画像処理です。

元画像から2~3種類の明るさの違う写真を使う

天体写真の一次処理(ダーク減算やフラット補正)が終わった段階の写真を基準として考えてみます。

この一次処理が終わってホワイトバランスや軽くレベル調整程度だけ行った初期段階の写真って、まだ殆ど白飛びしているところが少ないと思います。

まだレタッチ前の白飛びがマシな状態ですね。

この「初期段階の写真」と「強調後の写真」の2枚を使ってセルフHDRを行う形です。

もちろん強調処理が途中の段階の物も使って3段階で行ってもいいですし、4段階でも5段階でも可能です。

ただ今回はわかりやすいように2段階で説明していきます。

合成には星マスクや星雲マスクを調整しながらHDRマスクを作成する

いつも天体の画像処理をする時は星雲マスクや星マスクを使うのですが、このマスク達を応用して調整しながらHDRマスクとしてセルフHDR合成を行っています。

合成方法は加重平均を使う

セルフHDRではいつも加重平均合成を使っています。

強調した元画像にHDRマスクを適応させて強調前の元画像を合成していくのですが、その時の合成方法を「加重平均」としてその割合を変えながら自然になるところを探って調整していきます。

一度セルフHDR合成を行うと白飛びが抑制されて恒星とかが小さくなりますので、再度加重平均合成を行うと更に抑制・復元されていきます。

また、加重平均を繰り返しながら、途中でHDRマスクを小さ目にして更に加重平均をすると自然に合成されていきます。

セルフHDRのやり方

では、実際にセルフHDRをやってみようと思います。

ステライメージ8でやっていきますが、PhotoShopやCorel PaintShop、その他フリーのソフトでも画像処理できると思います。

星雲をセルフHDRする

M31(アンドロメダ銀河)のコンポジットしてちょこっとレベル調整した画像を元画像として複製しておきます。

※セルフHDRの効果を見るだけなのでフラット補正はしていませんが気にしないで下さいね。

とりあえず片側をデジタル現像とトーンカーブをして強調みました。

左が元画像のアンドロメダ銀河で右がデジタル現像とトーンカーブをした画像です。右は淡い部分は出ましたが中心部は白飛びしています。

【左】元画像【右】デジタル現像とトーンカーブをして強調したアンドロメダ銀河

強調した画像からセルフHDRマスクを作ります。

強調したアンドロメダ銀河の画像から作ったHDRマスクです。星雲マスクから作って中心部のHDRしたい場所だけ残しています。

強調したアンドロメダ銀河の画像から作ったHDRマスク

このマスクは星雲マスクを作ってHDRしたい場所だけ背景レベルを切り詰めただけです。

一応セルフHDRマスクとしておきます。

そして強調した画像にこのセルフHDRマスクをを適応させます。

その上で元画像を加重平均合成で自然になる割合を探りながら合成しますが、1回目は50%としてみました。

1回目のセルフHDRです。加重平均50%で合成するとアンドロメダの中心部の白飛びが抑制されました。

1回目のセルフHDR

かなり中央部の白飛びが抑制されて復元されたと思います。

次にセルフHDRマスクをレベル補正の最小値を少し上げて影響する部分を小さくします。

レベル補正で最小値を上げてセルフHDRマスクを少し小さくしました。

セルフHDRマスクを少し小さくする。

2回目のセルフHDR(加重平均)を行います。

2回目のセルフHDRをしました。1回目よりも更に中心部の白飛びが抑制されてM31が復元されました。

2回目のセルフHDR

今回もたまたま加重平均50%(加算平均と同じ)になりましたが、元画像とマスクのバランスで全く変わってきますので、探りながら調整して下さい。

20%とか30%とか少しずつ合成する方が自然になります。

このHDRマスクを小さくして加重平均を行うって作業を何度も繰り返していきます。

で、5~6回目位で最終的にこんな感じのHDRマスクになりました。

最終的なHDRマスクです。中心部だけ保護されるマスクになりました。

最終的なHDRマスク

M31の中心部周りだけですね。

で、最後にビフォーアフターの比較を見て頂こうと思います。

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありです。明らかに白飛びが抑制されてM31の中心部が復元されていますね。

【左】セルフHDRなし【右】セルフHDRあり|白飛びが抑制されて復元されたアンドロメダ銀河全体のビフォーアフター

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありです。中心付近拡大してみると良く白飛びが抑制されてM31の中心部が復元されているのがわかります。

【左】セルフHDRなし【右】セルフHDRあり|白飛びが抑制されて復元されたアンドロメダ銀河を拡大したビフォーアフター

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありです。中心部だけ超拡大してみましたが、明らかに白飛びが抑制されてM31の中心部が復元されており、見えなかった恒星が見えるようになっていますね。

【左】セルフHDRなし【右】セルフHDRあり|白飛びが抑制されて復元されたアンドロメダ銀河の中心部だけを拡大したビフォーアフター

明らかにセルフHDRをしたアンドロメダの方が白飛びが抑制されて模様が復元されていますよね。

銀河の中心部のビフォーアフターを見ても、見えなかった星も見えていますし、色合いまで復元されていると思います。

これで更に色も調整し易くなりますので、この後に別途マスクを作成してLab色彩調整やマトリクス色彩補正などの画像処理をするとドンドン綺麗になっておススメです。

ステライメージだけで可能です。

恒星をセルフHDRする

恒星をセルフHDRする場合は星マスクを加工して使うだけです。

M45(プレアデス星団)で簡単に記載しておきます。

左が強調前のM45(プレアデス星団・すばる)で右が強調後です。

【左】強調前【右】強調後のM45(プレアデス星団)

こんな恒星用のHDRマスクを作りました。

星マスクをボカシたりして作成しただけです。

初期段階のM45の恒星用のHDRマスクです。星マスクをボカシて作成した感じです。

初期段階のM45の恒星用HDRマスク

で、先ほどと同じように加重平均で割合を変えながら合成して、マスクを小さくして合成してを繰り返すとこんな感じになりました。

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありのM45プレアデス星団のビフォーアフターの画像です。ありの方が恒星が小さくなっていますね。

【左】セルフHDRなし【右】セルフHDRあり|M45プレアデス星団のビフォーアフター

左がセルフHDRなしで右がセルフHDRありのM45プレアデス星団の恒星を1つ拡大したビフォーアフターの画像です。ありの方が恒星が小さくなっていますね。

【左】セルフHDRなし【右】セルフHDRあり|M45プレアデス星団の恒星拡大ビフォーアフター

恒星の左側にある青いマルは気にしないでね(;’∀’)

僕の反射望遠鏡ミードのLXD55は補正ガラスが付いているのでこんな感じになっちゃうだけです(;’∀’)

恒星が小さくなったのでHDRマスクの効果が出ていると思います。

でもちょっと恒星周りが暗くなってしまっているのがわかりますかね?

これはセルフHDR合成の加重割合を上げて急いでやるとこんな感じになり易いので慎重にして下さい。

なのでちょっと失敗編ですね。

少しずつマスクを小さくして、何回も何回も合成する方が自然になりますよ。

セルフHDRマスクの応用(HDRマスク合成)

冒頭にアンドロメダ銀河とオリオン大星雲と天の川のサンプル画像を掲載しましたが、この内のアンドロメダ銀河とオリオン大星雲のセルフHDR画像は少し応用している「HDRマスク合成」と言う処理(とりあえず適当に名前を付けてみました)になります。

どういう風に応用したかと言うと、基準をISO25600で撮影して、ISO6400とかIS0100とかいろんな感度で撮影して、更にPENTAX-KPを購入した時に付いている付属のソフト「Digital Camera Utility5」でRAW現像の段階でISO25600の写真をISO51200位に増感したり、逆に減感したりした画像も使ってHDRマスクで合成しています。

通常は露光時間を少なくしていくのですが、ISOを変えたらどうなるのかやってみただけです(;’∀’)

ただ、露光時間を変えて行う普通のHDR撮影とは違うISO感度を変えてHDR撮影をして気が付いた事があるんです。

RAW現像で増感&減感してHDRマスク合成をする

どんな画像処理ソフトで増感したり減感したりするのかわかりませんが、PENTAX-KPの場合は付属の「Digital Camera Utility5」で出来ました。

Lightroomとか他のソフトでもできるのかな?

そうとわかれば!

例えばISO51200×30秒で程良いヒストグラムになる白飛びし易い天体があり、通常それで撮影するとします。

でもその対象が白飛びし易い銀河や星雲なら、敢えてISO12800×30秒で撮影するんです。

その上でRAW現像時に画像処理ソフトで

  • ISO51200に増感した写真をコンポジット
  • ISO25600に増感した写真をコンポジット
  • ISO12800のままの写真をコンポジット
  • ISO6400に減感した写真をコンポジット
  • ISO3200に減感した写真をコンポジット

こうしてソフトで5種類の明るさの違うコンポジットした写真を作成しておけば、1回の撮影で普通のHDR合成もできるし、セルフHDRマスクでHDRマスク合成もする事ができるんです。

極端に濃淡のある天体は低感度か露光時間を短くした写真を撮っておく

オリオン大星雲はトラペジウムまで出した上で周辺の淡い部分も出そうとすると絶対に1回の撮影では無理だと思います。

でも、このHDRマスク合成ならノイズはあまり気になりにくいので、1枚でも数枚でも良いので露光時間かISO感度を下げた物を撮っておくと白飛び抑制に役に立ちます。

その上でソフトで増感したり減感したりすれば更に段階が増えますのでHDRマスク合成がし易くなります。

つまり、ISO400でもう1セット数枚で良いので撮っておくと

  • ISO1600に増感した写真をコンポジット
  • ISO800に増感した写真をコンポジット
  • ISO400のままの写真をコンポジット
  • ISO200に減感した写真をコンポジット
  • ISO100に減感した写真をコンポジット

して使う事ができます。

要するに

ISO12800でたくさん撮影して、白飛び抑制用にISO400で数枚撮っておけばHDRできる!

僕は赤道儀だけでオートガイドがないので焦点距離1200㎜で星が流れないのは30秒~45秒までの露光時間なのでISOを変える形になりますけど、オートガイドがあれば露光時間を変えても良いです。

セルフHDRやHDRマスク合成のメリット

最近この「セルフHDR」「HDRマスク合成」をやっていて思うメリットを挙げておこうと思います。

  • 画像処理で白飛びしたところだけにHDRするので背景が一切ノイズっぽくならない
  • 殆どの天体はいつも通りの1回の撮影だけで済むのでラクチン
  • 白飛びを気にせず画像処理できるようになるので、淡い星雲や分子雲を出す為にガンガン強調できる
  • 普通のHDRのようにイラストっぽくなりにくい
  • 恒星だけHDRできる
  • 星雲だけHDRできる
  • 好きなポイントだけどこでもHDRできる
  • 白飛びが復元されるので色が付け易くなる

セルフHDRやHDRマスク合成は上記のようなメリットがあります。

まぁ素人が思い付いた画像処理ですのでこれが良いのかどうかわかりませんが、良ければお試し下さい。

最近ずっと同じ一眼レフカメラを使っていますが、画像処理で全然変わってくるので面白いですね。

ステライメージだけでもこういう事が可能ですし、最近はCorel PaintShopなども併用しながら画像処理をしています。

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コメント

  1. あいぼー aibou より:

    カイヤン二世さんへ
    お~!ご無沙汰してます!
    photohito長い事行ってませんでしたね。
    あのサイトって携帯に通知が来ないので、何か使いにくいと言うか何というか。
    それで運営さんに通知が来る方法ないのか確認したけど、そういう機能はないって事だったのでちょっと敬遠してました。
    でもまた見に行きますね。

    ちなみに僕は今のところダーク減算もフラット補正もしてないので、その辺りはアドバイスできる程知識無いですよ(;’∀’)
    ZWO ASI183MC 非冷却もまだ使った事ないし・・・

    でもまた情報交換しに行きますのでよろしくお願いします!

  2. アバター カイヤン二世 より:

    aibouさん、遅ればせながら、新年明けましておめでとうございます。
    photohitoでお世話になっていたカイヤン二世です。
    大変ご無沙汰をしています。m(_ _)m
    今回、CMOSカメラ(ZWO ASI183MC 非冷却)を購入しました。それで撮影したfits(ベイヤー)ファイルのダーク&フラット処理についてネットで調べているうちに、aibouさんのHPにたどり着きました。
    色んな記事を拝見しました。
    私は機材は随分とバージョンアップしましたが、処理の方は一向に上達していません。^^;
    またphotohitoの方にも登場して頂き、アドバイス頂けると嬉しいなと思い、あつかましくコメントをさせていただきました。
    今後もどうぞよろしくお願いします。

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