画像処理

やってみよう!天体写真のダークノイズ減算処理のやり方と検証

天体写真のダークノイズ減算処理のやり方と検証

天体写真を画像処理する時に一番初めにするのがダークノイズ減算処理。

訳してダーク減算。

画像処理の手順としては

となります。

ダーク減算はダークノイズ(青・緑・赤・白などの星のようなプツプツノイズ)や熱ノイズを除去できます。

やり方はカメラの設定だけでもできますし、後から画像処理ソフトですることもできます。

ダーク減算処理の効果

写真で例えるより音で例えた方がピンとくると思います。

音声を録音する時に何も声も音も入ってない状態でも「ザー」って言う音が入っていますよね。

これと同じことがカメラの中でも起こっています。

普段昼間の明るい写真(音で言うなら大きな音が入っている時)はこのダークノイズは気にならないのですが、暗いところを撮影した場合や長時間露光した場合は目立ちます。

では実際に目でダークノイズを見て下さい。

ダークノイズ検証画像です。左がダーク減算処理なし。右がダーク減算処理あり。

【左】ダーク減算処理なし【右】ダーク減算処理あり

上記はカメラのキャップをして光が入らないようにして撮影した写真(ダークフレイム)です。

PENTAX-KP/ISO25600/45秒/長秒時NR-OFF/高感度NR-OFF/ホワイトバランス-曇り/その他全てOFF/8枚コンポジット/ダークも8枚コンポジットで撮影しました。

上記は左がダーク減算処理なしで右がダーク減算処理ありです。

何も光を入れていないのにこのようなノイズだけ撮影されます。

では、拡大して詳細に見てみましょう。

ダークノイズ検証拡大画像です。左がダーク減算処理なし。右がダーク減算処理あり。左の画像にはダークノイズが見られます。

【左】ダーク減算処理なし【右】ダーク減算処理あり

左にはダークノイズが見られます。

右のダーク減算処理した写真は殆どダークノイズは見られません。

こういったのがダークノイズであり、ダーク減算処理の効果です。

天体写真は長時間露光をしますが、そうするとダークノイズも増えて目立つようになります。

なのでライトフレーム(元の写真)からこのダークノイズだけ取り除く画像処理がダークノイズ減算処理となります。

天体写真をしているとこのダークノイズが気になるのでみんなダーク減算をすると言う理由なんですね。

ダークノイズは露光時間が長ければ長い程、また気温が高い程多く発生する形になります。

ただ、撮影の条件(ISO感度・露光時間・気温)などで気にならない場合もありますので、必ずしなければいけないなんて事はありませんが、ダーク減算した方が良いです。

また、冬はやらなくても良いかもしれないけど、夏はカメラが熱くなってダークノイズが増えるのでやった方が良いと思います。

やり方と検証

ダークノイズ減算処理はカメラの設定だけで処理する方法と、後から画像処理ソフトでする方法があります。

では、それぞれ見てみましょう。

カメラの設定でダーク減算処理

カメラに長秒時ノイズリダクション(長秒時NR)や長秒時ノイズ低減などの設定項目があります。

PENTAX-KPの長秒時ノイズリダクション(長秒時NR)の設定画面(auto-on-off)です。

PENTAX-KPの長秒時ノイズリダクション(長秒時NR)の設定画面

これをONにするだけでカメラが自動でダーク減算処理をしてくれます。

とても簡単ですし、撮影直後にダークを撮影する為、きっちりダークノイズが処理できます。

但しデメリットとして露光時間が2倍になると言う事です。

流れとしてはこうです。

  • 1.1分露光する
  • 2.撮影が終わったと思ったら勝手にカメラがシャッターを切る
  • 3.再びカメラが自動で1分ダークフレイムを撮影する
  • 4.全ての撮影を終えたらカメラが自動でダーク減算処理をするので数秒~十数秒掛かる

なので「撮影時間が2倍」+「カメラが画像処理する数秒から数十秒の時間も掛かる」と言う事です。

別に1枚だけなら良いですが、天体写真は何枚も撮影してコンポジットします。

例えば1天体に3分露光を20枚撮影すれば1時間掛かります。

更にカメラでダーク減算しようとすると更に1時間掛かり、合計2時間+カメラが処理する時間が掛かってしまう事になります。

こうなると非常に時間の影響が大きくなります。

高感度で露光時間が数秒や数十秒程度なら影響は少なくなりますが、それでも一晩に撮影できる天体数は半分になってしまいます。

こういうデメリットがあるので、天体マニアの方はダークノイズ減算処理は後日画像処理で行うと言う方がいらっしゃる訳です。

では、カメラのダーク減算の効果はどうでしょうか?

下記はカメラの長秒時NRをONとOFFをそれぞれ1枚だけ撮影した写真の比較です。

カメラの長秒時ノイズリダクションの比較拡大写真です。左が長秒時NR-OFFで右が長秒時NR-ONです。綺麗にダークノイズが除去されていますね。

【左】長秒時NR-OFF【右】長秒時NR-ON

左が長秒時NR-OFFで右が長秒時NR-ONです。

きっちりダークノイズが無くなっていますね。

時々カメラの長秒時NRをすると画質が悪くなると言うお話を聞くことがありますが、上記を見ていかがでしょうか?

PENTAX-KPで検証していますが、僕的には特に気になる感じでは無さそうです。

撮影後にダーク減算処理

ダークノイズ減算処理は撮影後にする事もできます。

家でカメラにフタをして、ファインダー部分も塞いで光が入らないようにしてダークフレームのみ撮影する形です。

ダークファイル撮影の為にカメラレンズを外してキャップを付けた黒色のPENTAX-KP本体です。

キャップを付けたPENTAX KP

そして画像処理ソフトを使って撮影したライトフレームからダークフレイムを減算処理します。

ただ、この時に重要なのがダークノイズは露光時間と気温によって発生するノイズパターンが変わってしまいますので、以下の条件を揃えてダークフレームを撮影する必要があります。

  • カメラにキャップ、ファインダーも塞ぎ、暗所で撮影する
  • ライトフレームもダークフレームもjpegではなくRAWで撮影する
  • 露光時間やISO感度、その他の設定をライトフレームと同じにしてダークフレームを撮影する
  • ライトフレームと同じような気温でダークフレイムを撮影する
  • ダークフレームもライトフレームと同程度の加算平均コンポジットをする

えっ?同じような気温ってどうするの?って大きなポイントがあります。

ベテランの皆さんはいろんなISO感度や露光時間、気温などでダークフレームを撮影したライブラリーを作っています。

普段時間がある時や深夜などにカメラを外に出して気温を確認しながら作成したり、冷蔵庫にカメラを入れて撮影したりしています。

カメラ毎にこの作業をしてダークフレームを揃えておいて、撮影したライトフレームの条件に合わせたダークファイルを作成している訳ですね。

そういうダークファイルを撮影するのも楽しいかもしれませんが、僕は面倒なので今の時点ではダークファイルは撮影せず、カメラのダーク減算処理で行っています。

また、後からダークフレームを撮影する場合のデメリットとして、手間暇掛かる上にきっちり温度が合わない事もあり、ダークノイズがうまく合わず時折残ったりすることがあります。

ただ、最近はカメラの性能も良くなって露光時間が短くて済むからなのか、ダークをしなくても意外と問題ないんじゃないか?なんて思ってます。

ただ、冬はダークノイズが出にくいのでそれでも良いかもしれませんが、夏はカメラが結構熱くなるので厳しいでしょうね。

ダーク減算処理できる画像処理ソフト

StellaImage(ステライメージ)

僕も使っている画像処理ソフトがステライメージです。

どんなRAWファイルでも対応しているので、初心者の方にこそ買って欲しいのが天体写真専用の画像処理ソフト「StellaImage」ですね。

現在「ステライメージ9」を使っていますが、ダーク減算処理も簡単過ぎて驚きですよ。

単純に自動コンポジット画面でダークファイルを読み込むだけです。

マスターダークを作成しておく事もできるので、そんな場合は下記のようにすれば良いかと思います。

また、ダーク減算が面倒な場合、熱カブリは処理できませんがホットピクセルは簡単に綺麗に除去できる下記の方法もあります。

ステライメージがあるとホント楽で良いです。

RStacker

DNG・CR2・RAFなどのRAWファイルに対応しているダーク減算ができるフリーの画像処理ソフトです。

CR2やRAFは暫定のようですので、ご自身のRAWファイルが対応しているかは実際に使ってみて確認してみて下さい。

僕はまだ使った事がないので、使い方は別途検索してみて下さい。

RAP2

※2022年10月時点でリンクが無くなっており、現在はダウンロードができないかと思います。

有償ダーク減算処理ソフトです。

12,500円と結構なお値段なのですが、カメラのダーク減算よりも高品質なダークファイルが作成できるらしいです。

僕は使った事はないのですが、結構使っている人がいるようです。

ただ、一部CR2とRAFファイルに対応はしているようですが、基本的にDNGのRAWファイルしかできないようなので、Adobe DNG Converterなどでご自身のRAWファイルをDNGに変換してから使用する形になります。

SiriusComp

SiriusComp(シリウスコンプ)は比較明合成をするフリーの画像処理ソフトです。

星空タイムラプス動画を作成するソフトですが、このソフトでもダーク減算ができるようです。

但し、基本的にJPEGとTIFFファイルのみで、RAWを使用する場合はひと手間いるようです。

カメラの長秒時NRか?後からダーク減算か?結局どっちがいいの?

どっちがいいのか?ちょっとまとめてみます。

カメラの長秒時NR(長秒時ノイズリダクション)

メリット

  • ダーク減算が正確

デメリット

  • 撮影時間が2倍少々掛かってしまう

後からダークファイルを撮って画像処理ソフトで減算する

メリット

  • 一晩でたくさんの天体写真が撮影できる

デメリット

  • ダーク減算が合わず、ダークノイズが残る場合がある
  • ダークフレイムを作成する手間が掛かる

とりあえず僕は現段階では簡単なカメラの長秒時NRでやっています。

後からダークフレームを撮影した時に、少しダークノイズが残っちゃう事と手間が掛かりそうで難しそうなのがちょっと・・・

なので機械任せのカメラでダーク減算にしときます。

ただ、やっぱり撮影時間が2分の1になるのは大問題。

綺麗に晴れてる時はドンドン撮影したくなるんですよねぇ。

それと総露出時間が同じ場合の「高感度多枚数」vs「低感度小枚数」テストをやってみて思ったのですが、高感度多枚数だと1回辺りの露光時間が少ないのでダークノイズも少ないんですよね。

そこで思ったのが、ダークファイルを撮影してる時間があるなら、ライトフレームをその分撮影した方が綺麗な写真になると思うんですよ。

いっその事ダークファイルは撮るのやめようかとも思ってます。

しかし、もしやるなら後からダーク減算やる事にしようかなぁ。

フラット補正の方もソフトビニングフラット補正なら簡単だけど、フラットフレームを撮影するのは難しい。

ダークフレイム作成もなかなか・・・

ベテランさんは後からダーク減算だし、やっぱり今年はやるなら後からダーク減算にしてみようかな。

皆さんはカメラのダーク派?後からダーク派?ダークやらない派?

天体写真撮りに行きたいなぁ。

追記:最近わかった事

ダーク減算をするとダークノイズは減るけど普通のノイズは増える感じなので今はやっていません。

やる必要がある位ダークノイズが気になる場合は、カメラのダーク処理じゃなくて、別撮影でダーク画像を数多くコンポジットした物を使った方が良いと今は思います。

なので僕は今ダーク撮影はやらずにその時間をライトフレーム撮影に使用してライトフレーム数を増やすようにしています。

ミラーレスだと熱ノイズが出易いのでダーク処理が必要な場合が多いと思いますが、僕が今使っている一眼レフ(PENTAX KP)だと熱ノイズが出にくいです。

天体写真にはミラーレスよりもミラーありの一眼レフの方が向いている気がします。

追記2:画像処理をすればする程ダークノイズが気になる

段々画像処理に凝ってくると、何だか最近ダークノイズが気になってきた。

画像処理をすればするほどホットピクセルが気になる。

とうとうベテランさんの気持ちがわかってくる年頃になってきました。

だから手間だけど、後からダーク減算をボチボチやり始めております!

それとステライメージでの前処理全般についてよくわからない場合は下記も参考にしてみて下さい。

追記3:やっぱりダーク減算が面倒臭い方に!

後からダーク減算を何回かやったのですがやっぱり面倒臭い!

幸い僕が使っているPENTAX-KPは、一眼レフカメラと言う事で熱カブリが殆どありません。

なのでホットピクセルだけを除去できれば良いんです。

そんな僕は下記のような画像処理を始めました。

この画像処理はガウスぼかしとコンポジットだけでホットピクセルを除去する方法です。

熱ノイズが出易いミラーレスカメラにはおススメではないかもしれませんが、熱ノイズは後から別の方法で画像処理できると思いますのでまたアップしたいと思います。

P.S 最新の一眼レフカメラやミラーレス一眼もホットピクセルが少なくなってきていますね。

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